「同じ「空室率」なのに なぜ数字が違う?その理由を徹底解説」不動産レポートvol.46

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「同じ「空室率」なのに なぜ数字が違う?その理由を徹底解説」不動産レポートvol.46


今月のTOPICSデータ
同じ「空室率」なのに なぜ数字が違う?その理由を徹底解説

定点観測データ
Ⅰ 沖縄中古マンション流通レポート

・ 沖縄県中古マンション成約状況
・ 沖縄県中古マンション新規登録状況
・ 沖縄県中古マンション在庫状況

Ⅱ 沖縄県住宅着工戸数

今月のトピックス
観光客数に大きく影響を受ける沖縄県の地価

賃貸市場の動向を知る上で欠かせない指標が「空室率」です。しかし一口に空室率といっても、複数の定義と算出方法が存在します。それぞれの意味を正しく理解していないと、市況判断や投資判断を誤る可能性があります。

■知っておきたい3つの空室率

まず、収支計算をする上で知っておくべき3つの定義についてお伝えします。

もっとも基本的なのが「現時点の空室率」です。これは“今まさに空いている部屋”がどれくらいあるかを示したもので、空室戸数÷総戸数 で算出されます。

公益財団法人日本賃貸住宅管理協会が公表する「市場データ(日管協短観)」は、管理会社へのヒアリングをもとに“管理戸数ベース”で集計されたもので、調査時点の空室率を表します。2023年度の全国平均入居率は95.8%、つまり空室率は4.2%でした。

次に、「稼働日数をもとにした空室率」です。

空室率=(空室数×空室期間)÷(総戸数×365日)

こちらは“時点”ではなく“期間”で捉えるため、年間の稼働状況をより正確に把握できます。収支シミュレーションでは最も実用性の高い定義といえるでしょう。

3つ目は、「実稼働家賃をもとにした空室率」です。

空室率=空室による未収入賃料÷年間総貸出賃料

たとえ空室戸数が少なくても、高額賃料の部屋が長期間空いていれば収益への影響は大きくなります。表面的な戸数ベースでは見えない“収益の目減り”を示す指標です。

このように、空室率は使う目的によって意味が大きく変わります。市場状況を知りたいのか、稼働状況を把握したいのか、それとも収益のブレを確認したいのか。投資家にとって空室率を正しく読み解くことは、安定した収益判断に不可欠な視点です。

■エリア別の空室率がわかる「住宅・土地統計調査」

総務省統計局が5年に一度行う「住宅・土地統計調査」。公的データで、かつ、最も網羅的に空室率を把握できるものと言えます。先ほどの3つの定義で言えば、1つ目の「調査時点における空室率」を把握することができます。

空室の中には、「空き家問題」でイメージされる誰も住んでいない戸建てなども含まれるため、投資という観点で考える場合には「賃貸住宅」をデータから抽出して空室率をみていく必要があります。

那覇市の賃貸住宅の空室率の推移をみたものは、以下の通りになります。

■賃貸住宅の空室率推移(那覇市)

(総務省統計局「住宅・土地統計調査」より作成)

那覇市の賃貸住宅空室率が下落しているのは、空室数が大きく変わらない一方で「賃貸住宅の総数が増えている」ことが背景にあります。需要の底堅さが読み取れます。また、エリア別で比較すると以下のようになります。

■市町村別 賃貸住宅の空室率(2023年)

住宅・土地統計調査は5年に一度になりますが、市町村別で細かく空室率を見ることができ、エリア比較をすることが可能です。

全国平均の空室率 4.2%(日管協短観)と比べて数値が高く見えるのは、住宅・土地統計調査は「募集していない賃貸住宅」も含む のに対し、日管協短観は 「募集可能な管理物件」だけを対象としているためです。対象の違いによるギャップに注意が必要です。

■収支シミュレーションで使える管理会社空室率

各管理会社が算出する「自社管理物件の空室率」は、より実態に近い値になる可能性があります。ただし注意すべき点は、算出基準が管理会社ごとに異なることです。

例えば、空室率を特定時点で測るのか、6か月以上空室の住戸のみ対象にするのか、あるいは募集停止中の部屋を含めるのかなど、定義が会社によって変わります。そのため、管理会社を選ぶ際には「空室率」という数字そのものだけでなく、その算出根拠や定義を必ず比較することが重要です。

■収支シミュレーションで使える管理会社空室率

空室率には複数の定義があり、データの出どころによって数字の意味は大きく変わります。公的統計で市場全体の傾向を把握しつつ、管理会社データで現場の稼働状況を確認し、収支計算では実稼働家賃を基準にする。目的に応じて指標を正しく使い分けることが、賃貸経営の安定性を高める鍵となります。

 

定点観測データ

Ⅰ 沖縄中古マンション流通レポート

■沖縄県中古マンション成約状況

出典:(公財)東日本不動産流通機構

<成約件数>

平均成約㎡単価

■沖縄県 中古マンション新規登録状況

<新規登録件数>

<平均新規登録㎡単価>

<対新規登録成約率>

※当月成約件数÷当月新規登録件数

<成約価格と新規登録価格の差(㎡単価)>

※新規登録価格ー成約価格

■沖縄県 中古マンション在庫状況

<在庫件数>

<平均在庫㎡単価>

<対前月在庫成約率>

※当月成約件数÷前月在庫件数

<成約価格と在庫価格の差(㎡単価)>

※在庫価格ー成約価格

Ⅱ 沖縄県住宅着工戸数

■沖縄県貸家着工戸数

出典:国土交通省


※本レポートは不動産に関して参考となる情報の提供を目的としています。
本レポートはあくまでも過去の情報であり将来の市場環境や不動産に関する投資の運用成果等を示唆あるいは保証するものではありません
※本レポートに掲載している情報に関しては、万全を期しておりますが、その正確性を保証するものではありません。

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