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【企業は土地所有の有用性や土地の購入・売却についてどのように考えているのか?】CRE(企業不動産)コラム vol.10

【企業は土地所有の有用性や土地の購入・売却についてどのように考えているのか?】

企業は、土地所有の有用性や土地の購入・売却について現在どんな風に考えているのか?
国土交通省が毎年調査している、「企業の土地所有・利用状況に関する意向調査」の最新レポートが今年の1月に公表されましたので、そのデータを分析しつつ、今後の企業と不動産の関わり方(つまりCRE戦略のあり方)について、いくつかのテーマに分けて検討してみたいと思います。

この調査は8大都市に本社が所在する株式会社 4,000 社に対し、昨年11月にアンケート調査を行ったものです。この調査は平成5年から四半世紀にわたり行われているものですが、メディアが大きく取り上げることが少なく、それほど知られた調査ではありません。しかし、企業の不動産戦略を考える担当者の方々や企業に対して不動産戦略の提案を行う企業などは、かなり役に立つデータが揃っていますので、一読されることをお勧めします。

テーマ1:未利用地について

アンケート調査によると、自社所有地をもつ企業のうち、未利用地のある企業の割合は、15.6%となっています。この20年間を俯瞰すると概ね15~20%の間の数字となっています。

大鏡CREマネジメント研究所|CREコラム「企業は土地所有の有用性や土地の購入・売却についてどのように考えているのか?

では、どうして未利用になっているのでしょうか?アンケート結果を見てみましょう。

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未利用地となっている理由は、「売却を検討したが、売却に至っていない」が 34.0%で最も多く、次いで「利用計画はあるが、時期が来ていない」が 25.5%、「土地を資産として保有したい」が 20.2%となっています。
最も多い理由の「売却を検討したが、売却に至っていない」は、ここ20年間理由のTOP1でした。「かつて高値で購入したため、売りたくても損切りできない」、「もう少し高値になるのを待つ」 のような、理由が考えられますが、これは大都市部での理由かもしれません。
地方都市の郊外などでは、「売りたくても買い手がつかない」という理由などもあるかもしれません。このアンケートは、8大都市に本社を構える企業向けではありますが、こうした企業も地方部、郊外部に工場や倉庫などを持っていることも多いと思われます。

では、未利用の土地を今後どうするのでしょうか?次のアンケート結果を分析してみましょう。

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未利用地の今後の対応策としては、「売却する」が 43.2%と最も多くなった。次いで、「当面そのまま」が 29.5%、「賃貸する」が 12.6%、「利用計画に従い利用する」が 9.5%となっています。
「使わないものは売却する」という回答が最も多いわけですが、これはCRE戦略としては最も一般的で効率的な考え方です。
使っていないノンコアな資産は、まず「賃貸などとして活用する」ことで、収益を生む資産に変えることを検討してみます。そして、賃料等賃貸借条件を勘案して、「貸すよりも今手放す方が得」と判断すれば、「売却する」となります。
アンケート結果で2番目に多い、「当面そのまま」は、問題ありの可能性もあります。自社の置かれている状況や、時流などを判断して「当面そのまま」だと言いうのですが、「問題先送り」というような感じで「当面そのまま」では、2000年代前半に見られたような「モノ言う株主からの突き上げ」のようなものがあるかもしれません。「問題先送り」のイメージで「未利用地を当面そのまま」にするのではなく、CRE戦略の専門家やあるいはこうした事例を数多く手がけた企業に相談するといいと思います。

テーマ2:土地の売買について

企業はどういう理由で土地を購入するのでしょうか。

土地の購入(または購入検討)の目的では「自社の事務所・店舗用地」が 30.6%で最も多く、次いで「自社の工場・倉庫用地」が 27.6%、「賃貸用施設用地」が 24.1%、「自社の資材置場・駐車場・その他業務用地」が 18.8%となっています。
理由1位の「自社の事務所・店舗用地」ですが、かつては土地購入理由の5割以上を占めた理由でしたが、近年右肩下がりで30%前後に留まっています。逆に「賃貸用施設用地」は 24.1%となっていますが、平成19年頃までは10%台前半の数字でした。このことから分かるように、企業の賃貸用物件の所有意欲が高いことがうかがえます。

アンケートでは、1年以内に土地購入を予定(または検討)している企業に、その理由を尋ねています。「自社の事務所・店舗用地」が 28.9%で最も多かったのですが、マイナス7.7ポイントと大きく減らしています。2番目に多い理由は、「賃貸用施設用地」で、25.9%。こちらは、逆に前年度対比+ 11.9 と大幅に上昇しています。企業の賃貸用物件取得に意欲が高いことがうかがえます。土地購入を予定(または検討)している企業の、4社に1社は自社利用ではなく、そこに賃貸用物件を建てて、賃料収入を得ようとしているわけです。
3位以降は、「自社の工場・倉庫用地」が 23.7%、「自社の資材置場・駐車場・その他業務用地」が 20.0%となっています。

次に、売却についてです。
土地の売却(または売却検討)の理由では、「土地保有コストの軽減」が 18.9%で最も多く、次いで「販売用地のため」が 17.9%、「資金調達や決算対策」が 14.7%となっています。

では、売却(または売却検討)した土地の、それまでの利用形態はどんなものだったのでしょうか?
1位は、「賃貸用施設用地」が 30.2%と最も多くなりました。次いで「自社の事務所・店舗用地」が 17.7%となっています。賃貸用施設はここ2~3年増えています。前項理由のうち、企業が「事業の資金調達や決算対策」に活用しているものと思われます。

このように、ノンコア資産でお金を生みだす賃貸用物件は、所有していると賃貸収入があります。ここぞという時に売却すれば、大きな資金調達にもなる可能性があります。

このアンケートから見て取れるように、昨今の企業は賃貸用物件を上手く活用する(あるいはこれからしようとする)ことで、企業業績の向上を目指している様子がうかがえます。

不動産エコノミスト
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
吉崎誠二(よしざき せいじ)

(株)船井総合研究所上席コンサルタント、RealEstate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者 等を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行っている。
著書は『データで読み解く 賃貸住宅経営の極意』など多数。http://yoshizakiseiji.com