コラム

【賃貸住宅の建て替え】CRE(企業不動産)コラム vol.8

【賃貸住宅の建て替え】

日本では賃貸物件の建て替え期を迎えており、建て替えは今後かなり増えると思われます。

 沖縄県においても、その傾向が出始めると思います。1972年に日本復帰、そして1970年代後半くらいから住宅環境も徐々に整備されて賃貸住宅の建築数も増えてきました。沖縄県における賃貸住宅のほとんどがRC造であるため、耐久性の点からすると大きな問題はありませんが、見た目、住設機器等の古さは否めません。そうなると、賃貸住宅としての競争力は大きく低下してしまいます。
 沖縄県における賃貸住宅も建て替え期をむかえています。今回は賃貸住宅の建て替えの概要について考えてみます。

ライフスタイルの変化も自宅戸建て住宅の建て替えの大きな要因

一般的な自らが住む戸建て住宅については、築年数が40年を超えた辺りから、建て替えや取り壊し、もしくは物件を手放すなどと言った、次ステップをどうするかについて検討され始めます。
 自宅物件の築年数が40年を超える頃にこうした検討を始めるというのは、建物そのものの老朽化・破損などがトリガーとなることがほとんどだと思います。
しかし、それ以外に要因があることも多いようです。家族環境の変化(具体的には、子供の結婚、進学等)により、このままこの家に住み続けることがベストなのか、という疑問がわき始めます。こうしたライフスタイルの変化の方が建物の老朽化より大きな要因になることも多いようです。

賃貸住宅の建て替え要因

大鏡CREマネジメント研究所|CREコラム「賃貸住宅の建て替え」|大鏡建設

 

 一方、賃貸住宅の建て替えの要因となるのは、老朽化でしょう。そして、その老朽化を意識するトリガーとなるのが、空室が目立つようになること、入居者様客付けに時間がかかること等があげられます。「空室が増えているのは、やっぱり、ウチの賃貸住宅はもう古いかな。。」というオーナー様の声が聞こえてきます。
 大都会の超人気エリ以外では、築30年を超えた賃貸住宅は競争力を失っていきます。築30年というと1988年施工の物件です。バブル景気の上昇機運の真っただ中に建てられた賃貸物件の中には豪華な仕様のものもあります。しかし、現在はスマホやPCで物件探しをする時代です。物件内覧に行く前に、ネットで条件を入れて検索し、そこで出てきたものの中から選んで、不動産会社さんに問い合わせるという流れです。この条件では、立地条件を除けば、賃料、広さ(間取り)、築年数でまず、ふるいにかけます。〇万円以下、〇〇㎡以上、築〇〇年以内、という感じです。「実際は古さを感じないいい物件だけど、物件案内が入らない・・」となってしまう例も多いようです。
 
 空室の増加は、賃料下落につながります。こうした悪循環が収まらないなら、いっそ建て替えを行おう!とすぐ決めれればいいですが、たいていはそんなわけにはいきません。ちなみに、いうまでもありませんが、大型リフォームをすれば、見違えるように新しい賃貸住宅になりますが、表記の築年数は変わりません。
空室増、賃料下落は賃貸住宅経営の収益を悪化させます。建物の残債務や該当エリアの将来の賃貸需要などあらゆる要因から判断して、「大丈夫」となれば、建て替えステージに進むといいでしょう。

賃貸住宅の建て替えの流れ

 自宅と異なり、「普通賃貸借契約」あるいは「定期借家契約」に基づいた賃借人がいる建物を建て替える訳ですから、これら賃借人の方の了解が必要です。ここが大きなハードルになります。賃借人の方々がすぐに了承してくだされればいいですが、時に弁護士の方に依頼する必要もあるかもしれません。
また、ある時点から順次、入居者を募集しない部屋が出てきますので、その際の収益が悪化することも考慮しなければなりません。
 
 下図は一般的な賃貸住宅建て替えの流れ(概要)を示したものです。

大鏡CREマネジメント研究所|CREコラム「賃貸住宅の建て替え」賃貸住宅の建て替えの流れ|大鏡建設

 

ここで、示したように検討を始めたら、まず管理会社もしくは施工会社に相談してみましょう。 
建て替えて、そのエリアに賃貸住宅需要がこの先30年以上十分にあるのか?競合する物件の数の予測は?など 今後の予測をきっちり立てなければなりません。それで納得すればGOとなります。その後先に述べた賃借人(入居者様)との折衝を経て、取り壊しを行います。この後の新たな賃貸住宅を建てることになります。

不動産エコノミスト
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
吉崎誠二(よしざき せいじ)

(株)船井総合研究所上席コンサルタント、RealEstate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者 等を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行っている。
著書は『データで読み解く 賃貸住宅経営の極意』など多数。http://yoshizakiseiji.com

 

【不動産からの賃料収入で会社経営を担保する】CRE(企業不動産)コラム vol.7

【不動産からの賃料収入で会社経営を担保する】

 全国的に不動産価格が高止まりしています。沖縄も例外ではありません。

2018年の住宅地地価公示の価格上昇率は沖縄県がトップでした。新築マンション価格(坪単価)は、ここ5年で大きく上昇し、それを追いかけるように中古マンション価格(坪単価)も、上昇を続けています。

 言うまでもありませんが、不動産デベロッパーは、不動産を仕入れ多少の手を加えて仕上げを行って、販売しています。また、不動産業者の中には、主に転売を中心に行っている企業もあります。長く続く不動産価格上昇期には、例えばビルや土地を購入して、少し時間をおいて、それを転売し、利ザヤを取るというシンプルなビジネスモデルです。こうした企業は大都市部には意外に多いものです。

優良な自社不動産で 社員の雇用維持

 最近、こうした企業の中には、転売用に仕入れたの中で優良な不動産の転売を止めて、自社保有を進めているところも増えているようです。その意図は、この先の不動産市況が不透明で、いつまで今のような好景気が続くか分からない、その時に備えているわけです。同種の企業経営者と話をしていると、現在の社員の雇用を維持できる分の賃料収入を得ることをイメージしていました。たとえ、売り上げがなくても、所有する物件から得られる収益で、社員の雇用が維持できるという体制です。

 

大鏡CREマネジメント研究所|CREコラム「不動産からの賃料収入で会社経営を担保する」

 

不動産保有と長期安定企業 の関係

 少し詳しく見てみましょう。

賃料収入-借入返済―OPEX(管理運営費用)が収益です。

この収益が物件ごとにありますので、それらを合計(プラスマイナス)します。ただし、賃料収入は、空室リスクや賃料下落のリスクがあります。また、返済が終われば収益は大きく善良します。
一方で、固定費用は割合が大きなものでは、人件費(福利厚生など含む)、オフィス関連費用(賃料など)です。この二つの差し引きがプラスになれば、いいわけです。

空室リスクや家賃下落リスク他収益不動産には多少のリスクがつきものですが、それらが回避できれば、理論上「つぶれない会社」になるわけです。
不動産賃料からの収益で企業の安定が担保されると、営業活動でのプラス分は、新たに企業拡大のための投資(人材、新規事業など)に回すことができます。このサイクルに入れば、企業成長が大きく期待できます。

 こうした例の代表格は、三井・三菱・住友 ・・・・といった財閥企業です。

長期安定企業を目指すのなら、不動産を保有すること、これは黄金律です。

不動産エコノミスト
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
吉崎誠二(よしざき せいじ)

(株)船井総合研究所上席コンサルタント、RealEstate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者 等を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行っている。
著書は『データで読み解く 賃貸住宅経営の極意』など多数。http://yoshizakiseiji.com

 

【中小企業が社宅を持つメリットとは?】CRE(企業不動産)コラム vol.6

【中小企業が社宅を持つメリットとは?】

有効求人倍率の高い「売り手市場」が続いています。
現在の採用売り手市場は、新卒・中途採用ともに見られる傾向のようです。首都圏では、高い有効求人倍率がつづいており、それに呼応するように人口流入が増えています。首都圏への人口流入は、これまでの関東各県、甲信越、東北地方だけでなく、近年増えているのは、関西圏からの流入です。

沖縄県下の場合、現在、復帰後最高の有効求人倍率を示していますが、県外からの流入が増えているという状況にありません。

大鏡CREコラムvol6|中小企業が社宅を持つメリットとは?|沖縄県における有効求人倍率と転入超過数の推移

しかし、採用活動は急に行っても、「求める人材」からの応募がくることはありません。

多くの企業から「もう少し採用が上手くいけば、事業拡大がスムーズなのに・・」という声が聞かれますが、こうした「売り手市場」状況下では、企業は応募者を増やすためにいろんな工夫を行い、転職者、就職活動者から、「選ばれる企業」になる必要があります。
 
 新卒学生が企業選びの際に重視する雇用条件項目に、住居関連の福利厚生が充実しているか?があげられることは、よく知られたことです。新卒入社の方々への給与は、概ね横並びで大差がないので、急用以外の恩恵をどれくらい受けられるかを知りたいという思いです。最近では新卒で就職して、3~5年内に転職する方も多く(第二新卒)こうした、転職希望者も、これに含まれると言えます。

  • 社宅があるか?
  • 住居手当はいくらか?
  • 何歳まで(入社何年目まで)住居手当はでるのか?
  • 等が、これにあたります。

    中小企業で社宅を持っている企業はそれほど多くないようですが、しかし、今後採用を強化していきたい中小企業、あるいは採用において苦戦することが多いような業界の企業等では、応募者への入社の魅力を高めるために、社宅を持つことを検討している企業も多いようです。また、自社で社宅を所有しないとしても、企業が10~20程度の部屋があるマンションを1棟丸ごと賃貸して、各部屋を社宅と社員に貸すような事例も増えているそうです。

    また、住居手当を出す企業は、大企業ではほぼそれに該当しますが、最近では積極的に採用を行っている中小企業の多くが、住居手当を出しているようです。手当の額は、概ね賃料の20%程度(上限額あり)が多いようです。

     社宅以外にも、中小企業が取り組む採用力強化策とし、「魅力あるオフィス作り」があげられます。

    魅力あるオフィスとは、2つのポイントがあります。
    1つ目は立地条件がいいこと。オフィス街として人気があること、あるいは最寄駅から近いことです。車中心の地方都市では、車でのアクセスがよいこととも言い換えられます。また、車通勤主体の企業では、駐車スペースがちゃんと確保されていることも、魅力あるオフィスです。

    もう一つの魅力は、オフィスそのものの魅力です。

    大鏡CREマネジメント研究所|CREコラム vol.6 中小企業が社宅を持つメリットとは?

     

    働きやすい執務スペース、打ち合わせスペースが工夫されており充実している、休憩スペースが確保されている等です。

    最近では子供を持つ女性も積極的に働いておりますので、近くに保育所があるのも魅力です。大企業など、多くの女性を採用している企業では、オフィス内に育児スペースを設ける企業も増えてています。

    このように、働きやすい環境を作ることは、採用力の強化につながります。
     
     採用力強化のために、自社が所有する、(あるいは自社が賃貸している)ワークスペースにお金をかけることも、CRE戦略の一環です。

     企業が業績向上のためには、人材という戦力が必要です。そのために、企業は従業員の住まいのサポートを行ったり、働く環境を改善したりする。こうしたCRE戦略は、いまや大企業だけでなく、中小企業も積極的に行う時代になってきました。

     

    【企業が本業に使う以外のキャッシュを生む不動産をもつメリット】CRE(企業不動産)コラム vol.5

    【企業が本業に使う以外のキャッシュを生む不動産をもつメリット】

    企業が所有する不動産は4つに大別されます。

     

    1つは、コアつまり事業の中核となる必ず必要な不動産と、2つ目はノンコアつまり本業(事業)とはあまり関係のない不動産です。さらに、それらは、キャッシュを生むものと生まないものに分けられます。

     
    キャッシュを生むコア不動産は、本社支社ビル、工場、店舗などです。キャッシュを生まないコア不動産は、例えば、社宅、福利厚生施設などです。 またノンコア不動産でキャッシュを生む代表的なものは賃貸住宅、賃貸ビル、月極駐車場などです。キャッシュを生まないノンコア不動産は、遊休不動産ということになります。  
    キャッシュを生まないノンコア不動産、主に遊休地ですが、これは遊休地不動産が融資の担保に入っているかどうかにもよりますが、将来使うかどうかを判断して、売却あるいは何らかの活用をすることを考えるといいでしょう。


    大鏡CREコラム vol.5 |企業の保有不動産図

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    一方、キャッシュを生むノンコア不動産を所有することは様々なメリットがあります。以下、その説明をします。

     CRE戦略を考えるときには、  
     
     ①経営の視点    
     ②財務の視点    
     ③不動産の視点 

    の3つのアプローチが必要であると何度かこの連載の中で述べましたが、中小企業(オーナー企業)のCRE戦略においては、②の財務の視点の中でも「借り入れ担保状況」が関係してきます。また、オーナー企業の場合は、これらに加えて、事業承継、あるいは相続の視点も重要なポイントになります。


    特に相続は大きな問題です。中小企業のオーナーの中には、資産の大半を企業名義にしている例は多く見られ、兄弟、跡を継がない子供への財産分与が問題となります。こうした時に、企業が所有する不動産の中でノンコアな不動産、つまり事業そのものでは使っていない不動産の中でキャッシュを生んでいるものを売却すると、財産分与の際に、事業そのものには影響が少なく、分与がスムーズにいく例も多いようです。

    また、創業から30年くらい経つと、時流が大きく変化しており、どんな企業でも「事業内容の転換」や「新規事業の創設」が求められます。また、地方都市に根を張る企業が順調に成長を続け、エリア内で一定のシェアを獲得すると、都市部への進出、あるいは企業の買収などを行います。こうした転換、新設、拡大といった際の資金源となるのも所有する不動産かもしれません。


    例えば、賃貸用として賃料収入を得ている不動産を手放して、資金を創って事業拡大のために充てることもできます。また、企業が郊外に広い敷地面積を所有しており、その中にオフィスビルもしくは工場などがあるが、使っていない部分も多いような場合は、一部を売却して、事業転換拡大や相続のための資金にするということも考えられます。 このような場合は、将来使うかどうか?売却するとBSはどうなるのか?今は売り時か?担保に入っていないか?という先に述べた①~③の視点を総合して判断することが重要です。かなりの専門性が必要なので、①~③のすべてに精通する専門家(担当者)に相談するといいでしょう。


    このように、企業にとってキャッシュを生むノンコア不動産を上手く活用することは、企業にとって最も重要なことである、「企業の永続性」のための再投資に活用することができます。また、これは事業承継、そして相続の際に起こるかもしれない企業存続のリスクに備えることにもなります。

    【なぜ、収益不動産を所有する企業が増えているのか?】CRE(企業不動産)コラムvol.4

    【なぜ、収益不動産を所有する企業が増えているのか?】

    3倍になった収益不動産


    国土交通省が2016年6月に発表した資料によると、平成27年度の我が国の不動産資産は総額約2519兆円になるようです。 その中で、法人所有不動産は約430兆円(約17%)となっています。  
    そこで、平成27年度は平成20年度からどのくらい変化があったのかを知るために、各数字を比較してみましょう。

      平成20年度  平成27年度 比較
    不動産資産合計 約 2,300兆円 約 2,519兆円 +9.5%
    法人所有不動産 約 490兆円 約 430兆円 -12.3%
    収益不動産 約 68兆円 約 208兆円 +205%

     

     こうしてみると、この7年で不動産資産価値が上昇していることが分かります。  

    また、収益不動産は3倍以上になっており、平成27年度においては、このうち証券化された不動産(JREIT含む)は約50兆円で25%程度しかなく、それ以外の約158兆円分は企業や個人が所有する収益不動産となっています。証券化された不動産は平成20年度に比べてそれほど増えていませんから、収益不動産の増加は、企業や個人が所有するものが増えたことになります。  

    ちなみに、平成27年度の公的不動産(PRE)は約590兆円で、そのうち地方公共団体が所有するものは76%にあたる約450兆円です。  

    法人が所有する不動産価値は減少しています。2000年代から続く持たざる経営、合理的な経営が行われている表れです。不要な不動産、使っていない不動産、またはあまり効果的に使われていない不動産は思い切って処分する。一方で、本業以外の収益としての不動産賃料収入を得ている企業が多くなっていると想像できます。

    JPのKITTE事業


     こうした不動産賃料収入得ている大手企業の1つの、日本郵便(JP)があります。郵便事業、かんぽ生命、ゆうちょ銀行といった事業の業績はあまり芳しくないようですが、その一方で、大都市駅前一等地にあるそのエリアの中央郵便局の建て替えを行っています。  

    中央郵便局は東京、大阪、名古屋などの駅前の超一等地にありながら、低層な建物が多く、いわゆる低利用地でした。それらを建て替えて高層ビル(KITTE)を建てて、自社で使わない階層を賃貸として貸し出しています。  
    東京中央郵便局は、東京駅の目の前にあり、アンティークな建物でした。それを建て替える際に、それまでの建物を活かして、アンティークさを残すかどうかで、当時の総務大臣までその議論に加わり、メディアが大きく取り上げましたので、記憶に残っている方も多いと思います。あの建物がKITTEの第1号物件です。
    その後、名古屋や福岡でも駅前中央郵便局は建替えられ、KITTE名古屋、KITTE博多となりました。    

    こうしたJPの動きの背景には、宅配事業会社におされ先行きが不透明な郵便事業、貸出先にさがしに難航する銀行事業(ゆうちょ銀行)、収益性の低い生命保険事業(かんぽ生命)と既存の事業の先行きの不安からだと思われます。
    本業の先行きが不透明な時期を不動産賃料収入で補い、その収益を持ってその後の新たな事業の立ち上げ、発展につながることを目論んでいることでしょう。

    このように、事業会社における不動産賃料収入は、苦戦の本業を支え、次なるステージへの足掛かりとなる下支えとなるのです。

    大鏡CREマネジメント研究所 CREコラムvol.4|本業を支える 不動産賃料収入

    【賃料収入を得ることで、企業を襲う2つの波に備える】CRE(企業不動産)コラム Vol.3

    【賃料収入を得ることで、企業を襲う2つの波に備える】

    本業が不動産関連ではない企業が、不動産を購入してそこから賃料収入を行う事例が増えています。

    食料品等を扱う小売業を営むある会社は、大手小売店が同一商圏内に出店したことを機に、賃貸住宅を購入されました。

    食品などを扱う小売業は、日銭が入り比較的安定した業態ですが、しかし大手の多店舗化が行きつくところまで進んでいる現在、将来の売り上げ拡大、収益力増のハードルがかなり厳しくなっている現実があります。より地域密着の店舗経営を行い、店舗をリニューアルするなどして、経営努力を行っていますが、売上減少を食いとどめる程度の効果となっています。

    そんな状況から土地と建物を一括購入して賃貸住宅経営を始めました。

    銀行から信用が厚かったようで、不動産投資=賃貸住宅経営を始めるための融資は、すんなり行うことができました。

    1棟目の購入から、1年後に2棟目、3棟目を購入し、現在では安定した賃料収入があります。賃料収入から経費を引いて、銀行への返済を行っても、そこそこの金額が残っており、賃貸経営ビジネスは軌道に乗っています。

    産業のライフサイクルという波に備える


    この会社のように、食品小売業(スーパー)業態は、かつては地域一番店が全国各地に存在していましたが、昨今、大手による寡占化がどんどん進んでいます。

    産業にはライフサイクルがあります。 かつては華やかな産業でも、時代の流れとともに、寡占化が進み、あるいは産業そのものが廃れていくこともあります。


    大鏡CREマネジメント コラム|産業のライフスタイル

     

    こうしたリスクのヘッジのためにも不動産投資は有効です。

    より具体的に言うと、安定的な賃料収入はこうした波を吸収することが可能です。
    創業して、企業が発展、成長軌道に乗っている時に何に投資をするかの判断は難しいものです。多店舗展開する、人材採用を行う・・いずれも長期的に大きな投資となります。企業規模拡大・売上拡大・収益拡大に直接的にかかわるものへの投資をまず行うことでしょう。
    しかし、ここでもう少し長期的な目線に立って経営を考えると、将来を見据えた賃料収入を得るための賃貸住宅投資を選択肢に入れてもいいかもしれません。

    将来来るかもしれないインフレに備える


    また、賃料はインフレに連動して上昇する特徴があります。

    日本のここ25年はほとんどインフレ傾向にありませんが、今後長い目で見れば、多少なりともインフレ基調になると予想されます。

    産業のライフサイクルと同じようにこちらも波があります。

    80年代初めころまでの日本は5%以上のインフレが続いていました。その後バブル崩壊してしばらく経った頃以降は、デフレ期もしくは横ばい期という状況です。この低インフレ期は現在の先進国全体の傾向で、しばらく続きそうな気配です。しかし、資本主義経済下では、一定のインフレは必要であり、つい最近アメリカFRBが利上げを行ったように、先進国の中央銀行は、徐々に少しずつのインフレを誘導しているように思えます。

    この先いつごろから、かつてのようなインフレ基調になるかは分かりませんが、何十年も先ということはないことは確実です。

    民営家賃は、インフレに連動して価格上昇します。
    インフレ連動の収入を持つことは、企業にとっても個人にとってもインフレリスク回避に役立つものと思われます。

    【オーナー企業の不動産戦略とパートナー企業】CRE(企業不動産)コラム Vol.2

    【オーナー企業の不動産戦略とパートナー企業】

    地方都市に本社を置く企業の大部分は、中小企業と呼ばれる従業員が少ない会社です。
    こうした中小企業の多くは、創業者もしくはそのご子息、ご親類が株のほとんどを所有する、オーナー企業と呼ばれる企業です。

    この傾向は沖縄県においては特に顕著で、従業員を多く抱える比較的大きな企業においても、オーナー企業と呼ばれる企業がほとんどです。

    このことは、本土と異なる沖縄県企業の大きな特徴と言っていいでしょう。

    理由として、金融機関の融資のスタンスにあると言われていますが、それだけではなく、「長年続く風習」からかもしれません。

    オーナー企業の場合、企業として事業に使っているビルや工場といった不動産をオーナー一族(経営者)が所有していることが多いようです。

    企業が金融機関などから資金調達する際、経営者一族が所有する不動産を担保にしているといった例が見られます。こうした場合、企業の所有する不動産は企業のモノなのか、経営者のモノなのか、といった線引きが微妙な状況になります。多くは、企業の不動産ではなく、経営者所有の不動産という例が多いようです。

    中小企業における不動産戦略のパートナー


    中小企業の経営者でCRE戦略(企業不動産戦略)ということを、きちんと考えている方は、それほど多くないと思います。

    その理由として、中小企業の場合、経営者がメインプレイヤーとしてビジネスを展開していることが多いこと、またそもそも不動産についての詳しい知識が少ないということ等が挙げられます。
    また、先に述べたように、企業が使っている不動産の所有者が、経営者なのか、企業なのかの線引きがあいまいだということから、「企業の不動産」という概念に乏しいのかもしれません。

    このような会社が、何か新しい不動産に関するアクション(購入、売却、新設・・)を起こす際には、不動産に詳しい方は社内にいればいいですが、そうした例は少なく、知り合いの不動産会社に相談するという例が多いようです。

    この相談する会社が、企業の経営戦略と不動産戦略のどちらにも精通しているようであればいいですが、
    そうでなければ、単に「いい物件を見つけたので、どうですか」や「今はいい市況なので売却しましょう」といった、不動産そのものだけからの視点での提案となります。

     

    これでは、いい不動産戦略は描けません。

    大切なことは、「企業の経営戦略の一環としての不動産戦略」ということを常に考えて、「両方の視点でアドバイスできる」パートナー企業を見つけなければならないと思います。

     

    さらに、中小企業へのCRE戦略(企業不動産戦略)には、税務の理解は不可欠です。
    それは、オーナー企業の場合、相続、事業承継といったことが起こった際に、多くの場合不動産が登場するからです。

    製造業などでは、設備投資に資金が必要になります。
    銀行からの借り入れによって資金調達することが一般的です。そうすると、バランスシート(BS)の負債が増え、経営者による個人保証あるいは、担保として経営者が所有する不動産などがあてられます。こうなると、企業としての借入=経営者個人の借入 となります。

    「会社の運営のために所有する工場などの不動産の保証を経営者個人が行う」となると、その不動産はだれのモノなのか?線引きが曖昧となってしまいます。

    また、相続や事業承継を円滑に行うためには、株式だけでなく、不動産等の資産の最適化を行う必要性があります。
    法人所有の不動産と経営者(個人)所有の不動産、それらの不動産の承継はそう簡単ではありません。

     

    こうした専門知識をもったパートナー(アドバイザー)と普段からかかわりを持っておくことが大切です。


    中小企業・オーナー企業と不動産戦略パートナーの関係|大鏡CRE 企業不動産コラム

    【中小企業と不動産戦略】CRE(企業不動産)コラム Vol.1

    【中小企業と不動産戦略】

    中小企業のための不動産戦略


    国土交通省等の行政機関がまとめているレポートやシンクタンクが発信しているレポートなども、その論拠となる実態調査に協力してもらえる企業のほとんどが大企業であるため、どうしても実態の把握(現状分析)から提言に至るまで、その内容は一定以上の規模の企業に相応したものになっています。たいていのCRE関連の書籍やコラム、レポートなどは、こうしたものがベースにあるため、基本的にその内容は大企業をイメージして書かれています。

    しかしながら、日本の企業の90%以上は中小企業であると言われています。

    沖縄県内においては、ほぼすべての企業は中小企業であり、同族企業であると言っていい状況です。

    「企業と不動産の関わり」について真剣に考えないといけないのは、大企業も中小企業も同じです。

    中小企業にとってのCRE戦略は、ビルや工場等を所有する大企業の行うCRE戦略と大きく異なります。
    このコラムでは、中小企業、オーナー企業のための不動産戦略を中心に書き進めていきたいと思います。

    不動産戦略と位置づけ


    企業の不動産戦略を考えるときに大事な事は、不動産を不動産単独で考えないということです。

    具体的には、経営戦略の一環としての不動産戦略であり、財務戦略の一環としての不動産戦略でなければならないという事です。
    公式で書くと下記のようになります。

    【経営戦略 ×財務戦略 ×不動産戦略】


    中小企業の不動産戦略のポイント|大鏡CRE 企業不動産コラム

     

     

     

    中小企業における資産線引きの曖昧さ


    中小企業の場合、経営者(創業者)の資産と会社の資産の線引きがあいまいなことが多く、これは銀行から融資を受ける際に担保、個人保証等の事からこうした曖昧な状況が生まれていることが多いのだと推測されます。

    こうした点を考えると、中小企業の不動産戦略を上手く行うことは、会社と経営者の資産の線引きが明確になり、その先にある事業承継が行われる際にも、有効な手段になりうるということになります。

    増える土地を所有する法人数


    土地所有法人数の推移|大鏡CREコラム 企業不動産戦略

    図1は、国土交通省が平成25年(2013年)に公表した、土地を保有する法人の数の推移です。

    これをみると、平成15年(2003年)から平成20年(2008年)にかけては、法人数が減っています。
    当時「持たざる経営」がもてはやされた時代で、大企業中心に社宅を売却したり、稼働率の低い向上を閉鎖したり、あるいは工場を郊外に集約移転したり、さらには「使っていない土地」を売却したりして、所有する不動産の集約化が進み、コアビジネスに集中する傾向にありました。
    しかし、近年では、図表でもわかるように、社宅保有の傾向が復活したり、企業が不動産投資を行ったりすることも増えてきました。

    中小企業においても、遊休土地を売却するという選択を取らず、そこに例えば賃貸住宅を建てて、賃料収入を得ることで、安定した収入を増やすという方針の企業も増えてきました。

    このように、現在では「持たざる経営から、稼ぐ不動産を持つ経営」への転換事例も増えてきました。